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更新情報やら拍手のお返事やら。 本腰入れてメイルカとリンミクを愛でる! 某歌劇団89期生には真心込めた愛を贈る! 百合ん百合んな日常と愛を綴る
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過去の産物第一弾です

相当短期間でしたが、別のサイトに掲載していたので
見たことがある方もいらっしゃるかも…

Moreからどうぞ


不毛な恋。
叶わぬ夢。
初恋は叶わない。
叶うはずもない。
親しげに話すことも出来ないまま。
手は届かない。
のばしても、どんなにのばしても、私の手はもう、先生には届かない。

保健室の先生が好きだった。
無駄に広い敷地、入学早々道に迷った私を助けてくれた。
ただおろおろするばかりの私の手をひいて。
白くて少しよれた白衣の裾に、やけに目立つしみがひとつ。
目の前で踊るさらさらの髪から漂う甘い香りが、凄く印象的だった。

人と話すことが苦手だった。
でも、どうしてもこの人の声が聞きたくて、一言。
「香水、とか…つけてるんです…か?」
彼女も一言。
「うん。ANNA SUIの。貰い物だけどね。」
そう、かえしてくれた。
たったそれだけの会話が、とても嬉しかった。
まるで、一晩中語り合ったみたいな、そんな満足感。

学校生活にも慣れて、自分の通う学校の内側が見えはじめた6月。
私は、休み時間毎に保健室に通うようになった。
体だけはやけに丈夫に出来てるのに。
毎日通った。
教室だと落ち着かない、そんな無理矢理な理由をつけて。
ふーん、と興味のなさそうな返事をして彼女は仕事を続けた。
なにも言われないから、私はただ彼女を見つめていた。ひたすら、チャイムがなるまで、彼女に穴があくまで。

昼休み彼女と静かに過ごす時間。
でも、私たちの空間は交わらない。
私が、先生に話し掛けようとした回数、きっと神様だって覚えてない。
それなのに、彼女はたまに、本当にたまに空間の膜を通り越してくる。
まるで、そんなものありませんでした、とでも言うように。
彼女は意味のないうんちくを、私にたれる。
「ルパンの銭形って埼玉県警の、地方公務員らしいよ」
とか
「踊る大捜査線のぎばちゃんって東北大出身なんだって」
とか。
本当に、「うん、それで ?」って内容なのに、私は必死で回答をさがす。
でも結局
「そう…なんですかぁ…」
………
……

「…らしいよ」
会話終了。
先生は、養護教員失格な程感じが悪い、愛想がない、ずぼら。
KAZ。
感じ悪いのK、愛想がないのA、ずぼらのZ
たから、本当に具合の悪いひとか、怪我した人しか保健室にこない。
私と先生の時間を遮るものはなにもない。
ないはずなのに。
私と彼女の関係は、先生と生徒。
仲の良い先生と生徒、ではない。
ましてや、それなりによく話す先生と生徒、ですらない。
ただの先生と生徒。

この時間があまりにも亀足だから、時間には限りがあることを忘れてしまった。
この時が永久に続くなんて錯覚してしまった。
入学してからまる1年。
私と先生は無言の関係。
あの時から何ひとつかわらない…はずだった。
よれた白衣も裾のしみも、大好きなあの香水の匂いもかわらないのに。
先生に見えない鎖が巻かれた。
それを示す、左手薬指。
嫌だ嫌だ、先生にそんなもの似合わない。
やめてやめて。

「…先生、結婚…するんですか…?」
違う違う、違うっていって。
「うん。まあね」
後悔先立たず。
「…好きなんですか…その人のこと」
なに、あたりまえのこと聞いてるんだろう。
「ま、それなりにね。別に一緒にいても苦じゃないから」
後悔後に立つ。
「愛してないんですか…?」
「さあね、どうなんだろうね。」
好きです好きです、貴女のことが大好きです。
「なんていうかさぁ…有終の美っていうか、なんていうか…恋ってさ、いつか終わるから美しいんだよ。美しいけどさ、いつか終わるんだよ」
当たり前だけどね、といって彼女は顔をあげた。
こんなに沢山、彼女と話すのは初めてだ。
こんなに沢山、彼女が語るのも。

「あたしはさ、いつか終わることが分かってる美しいものより、終わることのない苦じゃないものの方がいい。」
今日の先生はよく喋る。
おしゃべりな先生の言葉は、私にはよくわからない、けどやっぱり私は彼女が好きなんだなぁなんて。
「難しい…難しすぎてわかんないです。」
心臓じゃない、みずおちの下あたりがきゅうってする。
私の心臓から血が流れでていく。

とめなきゃ…いたい、あいたたた

とまらないのは分かっているけど、右手でぎゅっとみずおちあたりのシャツを掴む、握る。
「そうかぁ、わかんないかぁ。まぁ、ようするに、あたしは自分が傷つきたくないんだよ。」
だから、恋はしない…そういうことだろうか。
うん、やっぱりわからない。
「あのね、涙の通り道にほくろがある人は、一生悲しい恋をするんだって」
彼女はそう言って、自分の左目の下にある泣きぼくろに触れた。
そういえば…

「貴女は…良い恋が出来るといいね」
彼女は、目で微笑むと泣きぼくろに触れた…右目の下、私が自分で見えない位置。
彼女が触れたところが、ピンポイントに無駄に熱い。
そういえば、私にも泣きぼくろあったんだった。
穴があくほど見つめてたのに、泣きぼくろがあったことも知ってたのに。
私と先生の共通点なんて考えたこともなかった。

先生はその後、学校を去った。
だから、私も保健室を去った。
あの日、私は一人でじくじくした傷を抱えながら帰った。
歩きながらいろいろ考えた。
それでも、少しも先生の思考に追いつけた気がしなかった。
そのかわり、湧くように出てくる涙涙涙。
薬指の銀色を思い出してさらに涙。
彼女の言った通り、溢れたものは私のほくろの上を流れていった。
すれ違う人々がぎょっとしてたけど、そこは気にしたら負けと思ってあえて気づかないふりを決め込んだ。

この先は良い恋をしよう、そう思うことにした。
だから、今のうちに全部流してしまえ。
先生を良い想い出にしてしまえ。
あっ、と思い立って右目下の泣きぼくろを人差し指で隠した。
オーケー、決めた。ほくろの上に涙を流さない。
良い恋をしよう、良い恋を。
先生が、そこに悲しみと苦しみの涙を流してきたのなら、私は涙の通り道に、嬉し涙しか流さない。
不毛で叶わない初恋だったけど、きっとこれは悲恋じゃなかったはずだ。
そう思うことにしよう。
最後の一滴まで搾り出した涙は、新たな通り道の上を流れ落ちていった。
 
 
 
 
 
 

意味がわかんないですね、はい。
昔の私は、何を考えていたのでしょう…
あ、でも、この頃から泣きぼくろある人好きだったんだ←

泣きぼくろいいですよね、可愛いです

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